研究概要 |
2次元空間にはその位相的性質の特殊性に起因して3次元空間では起こり得ない特有な現象が存在する。例えば、磁場中で電子は磁束としてボ-ズ粒子(複合ボソン)に転換される。この結果、電子は単独で凝縮可能になり、分数統計を持つ粒子も存在できる。量子ホール状態はその様な単独電子の凝縮状態である。 分数量子ホール状態を正しく扱う為に最低ランダウ準位射影を行った。この結果、電子の持つ自由度は重心座標のみになる。射影後の重心座標はx成分とy成分が非可換([x, y]=i)になり、場の理論はW_∞代数によって支配される。 量子ホール系においてはゼーマン・エネルギーが存在しない場合でも電子のスピンは自発的にある方向を向く。SU (2)対称性の自発的破れに伴う量子位相現象としての強磁性の発生である。この現象を複合ボソン描増に立脚して解析した。この系を支配する代数はW_∞SU (2)である。 2層量子ホール系はスピンの自由度を持つ1層量子ホール系にマッピングできる。この事を用いてキャパシタンス・エネルギー項とトンネル相互作用項の物理的意味を解析した。1層量子ホール系との類似からこれらの効果が大きくても層間量子位相が発生し安定に存在することが分かる。 これらの量子位相状態にはポントリヤ-ギン数で分類される位相的励起が存在する。これはスカ-ミオンと呼ばれ、分数電荷と分数統計を持つ粒子である。この励起の研究を行い、この励起はホール電流分布を測定する事によって検出できる事を導いた。また、W_∞SU (2)代数の背景には無限個の保存量の存在がある。この代数の性質と無限個の保存量の研究も行った。
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