2次元空間にはその位相的性質の特殊性に起因して3次元空間では起こり得ない特有な現象が存在する。例えば、磁場中で電子は量子化したディラック磁束と結合してボ-ズ粒子(複合ボソン)に転換される。この結果、電子は単独で凝縮する。また、分数統計を持つ粒子(エニオン)も存在できる。量子ホール状態はその様な単独電子の凝縮状態であり、その励起状態はエニオンである。 本年度の研究成果として、この物理的描像を実現する複合ボソン模型の不備な点を解決し、満足のゆく場の理論を完成させた。改良の要点は以下の様である。最低ランダウ順位の基底状態はラフリンの波動関数Ψ_<LN>[χ]で表され、一般の状態は解析関数ω[Z]を掛けてΨ[χ]=ω[Z]Ψ_<LN>で記述される。従来のボソン化はボソン的波動関数ω[Z]|Ψ_<LN>|への写像として定義されていた。私はボソン的波動関数ω[Z]への写像として改良ボソン化を提唱し、これを波動関数に持つ場の理論を構成した。最大の特徴は励起状態を半古典的近似で明快に解析できることである。特に、この理論をスピン自由度を持つ量子ホール系に応用して量子ホール強磁性状態を解析し、更に励起状態であるスカ-ミオンの諸性質を明らかにした。私の解析結果は従来の理論的結果を大幅に変更し実験結果を非常に良く説明する。 更に、私が提唱した2層量子ホール系に対する複合ボソン理論のアイディアを検証する実験を東北大学理学部超低温研究施設と同大学電気通信研究所高速知能システム研究施設と共同で行った。2層量子ホール系で2層の電子密度を自由にコントロールして量子ホール状態の安定性を測定した。複合ボソン理論の予言する実験結果を得た。
|