研究概要 |
本研究においては、一粒子一空孔対がスピン・パリティJ^π=0^+、アイソスピンT=1に組んで核内で集団運動をするアイソバリックアナログ状態と言われるフェルミ型の巨大共鳴の研究を目指す。質量数が100以上の比較的重い原子核において、(p,n)反応によってアイソバリック・アナログ状態を励起し、引き続いて陽子放出によって起こるこの巨大共鳴状態の崩壊を、陽子のエネルギー分析を行って終状態を同定しながら行う。この陽子強度分布によって、巨大共鳴状態の微細構造が明らかにされる。 エネルギー35MeVの陽子ビームは東北大学のK=50MeVAVFサイクロトロンによって加速し、標的核を衝撃し発生した中性子の運動量分析を12mの飛行管で行い、中性子の検出は液体シンチレーターを充填した検出器群によって行った。続いて起こる陽子放出によるIASの崩壊の観測は、半導体検出器のテレスコープによって粒子識別し入射子や膨大な数のガンマー線や中性子のバックグラウンドを低減して行った。 ^<208>Pb(p,n)^<208>Bi→^<207>Pb+p反応による崩壊陽子のエネルギースペクトルの観測に成功し、最終残留核の^<207>Pbの一粒子状態に対応するピークが観測された。中間状態であるIASの微細構造はこのスペクトルから構築される。 陽子検出系を磁気分析器から半導体検出器のテレスコープに変更したが、結果として平成7年度の目標とした崩壊陽子のエネルギースペクトルの測定に成功した。本センターのAVFサイクロトロンのビームタイムの割り当てが大変に厳しく、前項の掲げたスペクトルに見られるように未だ統計精度の点から問題が有り、また^<208>Pb標的の厚さによって分解能に問題がある。平成8年度は、中性子検出系の検出量を増やすなどの工夫をして、分解能の向上を計りつつ統計精度を上げていくようにしなければならない。
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