研究概要 |
本研究は^<24>Mg+^<24>Mgなどの重イオン散乱に見られる高スピンでの幅の狭い共鳴を対象にして,その共鳴状態における二原子核の運動の動力学的解法と分子的構造の解明を目指すものである.我々は、強結合的描像の新しい分子的模型を提案し,これらの共鳴における二原子核の動力学と共鳴機構の解明を進めてきた.この模型では,単に安定な配位をエネルギー的に探るだけでなく,安定点の回りでの構成核の振動や捻れ的回転運動など,様々な励起モードを求めることができる. 平成8年度には,7年度に引き続きR-matrix理論の適用可能性について検討を進め,スピンアラインメントの分析を行った.USAでの実験では^<24>Mg+^<24>Mg系の核スピンJ=36の共鳴状態について(2^+,2^+)非弾性チャンネルから軌道角運動量l=34で崩壊している可能性が示唆されている.更にごく最近,ストラスブールでは^<28>Si+^<28>Si系のJ=38の共鳴エネルギーで実験を実施し,弾性散乱,非弾性散乱の角分布がともにl=J=38を示す事が報告されている.これらの結果は,これらの系でスピンアラインメントが起こっていない事を示していると思われる.従って,この事は,構造の理解の面では基本的に我々の模型が妥当である事を示す結果として,今後が大いに期待できる.一方,定量的に詳しく見て行くと,崩壊機構の点からはこれは甚だ奇妙な事であると言えよう.なぜなら重い二原子核系での高スピン共鳴の崩壊では,低い軌道角運動量が,トンネル効果に於て、定性的に極端に優勢であるからである.現在,^<28>Si+^<28>Si系についても分析を行って,^<24>Mg+^<24>Mg系との精密な比較分析を出来るように計画を進めている.
|