現在我々が開発している硬X線偏向度検出器は多数のユニットカウンターで構成されている。またこのユニットカウンターは一つのプラスチックシンチレーターを4枚のフォスウイッチシンチレーターが囲むような構成を取っており、それぞれがほとんど独立に動作するように設計されている。そのためユニットカウンターの性能が検出器全体の性能を決定する。平成7年度は、一つのユニットカウンターを制作し、検出効率、モジュレーションファクター、フォスウイッチシンチレーターの特性を実験的に調べた。その結果ユニットカウンターは60keVの偏向X線に対して20%の検出効率、28%のモジュレーションファクターを獲得できることが分かった。またNaI(Tl)とCsI(Na)で構成されるフォスウイッチシンチレーターに直接X線を照射したところ、各々30keVと60keVのX線がノイズと分離されて読み出せるということが確認された。さらにCsI(Na)のアクティブコリメーターとしての性能を調べる実験を行ったところ、アクティブコリメーターの横側から来るバックグランドの約半分を遮閉することができるという結果も得た。以上の事を基礎として、検出器の気球環境での性能をモンテカルロシュミレーションで評価した。その結果、約3時間の気球実験でかに星雲を観測した場合、もしかに星雲からの40keVから200keVの硬X線が15%程度偏向していれば、99%の信頼度でその偏向を検出できるということが確認された。また以上の結果をユニットカウンターを使用して実験的に確認するために、かに星雲を観測した場合のユニットカウンターが受けつであろうバックグランドと信号のカウント数を実験室で疑似的に作りだし、性能を評価した。この実験ではユニットカウンターが受ける信号とバックグランドの比は1:3であり、さらに信号のうち20%が偏向しているということが想定されているため、ユニットカウンターは95%の無偏向X線とわずか5%の偏向X線を検出していることになる。しかしながらこの様な状況でも、ユニットカウンターは偏向をクリアに検出できるということが証明された。以上の結果は1995年10月にサンフランシスコで開かれた国際会議(IEEE)、1995年12月に宇宙科学研究所で開かれた大気球シンポジュウムで発表され、また1996年3月に開かれる日本物理学会でも発表が予定されている。さらにこの結果を論文とするため、現在IEEE Trans.Nucl.Sciに投稿中である。
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