クォーク数2の有限温度フルQCDの相転移の次数を決定する為、筑波大学学術情報処理センター設置のスーパーコンピュータVPP500/30を用いて、Wilsonクォークを用いた格子量子色力学(QCD)の数値シュミレーションを行った。シュミレーションは、格子による離散化のエラーを小さくする為、“くり込み群によって改良された作用"を用い8^3×4格子を用いて行った。また、格子のスケールを決定するため、8^4格子のシュミレーションも合わせて行った。主要な結果は以下の通りである。 1.クォーク質量の広い領域に渡って転移は滑らかである。この点は標準作用に対して得られていた結果と異なる。 2.クォーク質量を小さくしていくと、相転移点上のパイ中間子スクリーニング質量は滑らかにゼロに近付く。このことは、1.の結果と合わせて、8^3×4格子のゼロクォーク質量での相転移が連続であることを意味する。 3.カイラル凝縮(相転移の秩序パラメータ)は、理論的に予想されていた様に、3次元のO(3)スピン模型の臨界指数をもったスケーリング則を満たす。スケーリング則は2次転移に対して導かれたものなので、スケーリング則ながり立つことは、クォーク数2のQCDのカイラル相転移次数が2次である事を、強く示唆する。
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