研究概要 |
有限温度格子量子色力学に対して、くり込み群によって改良されたゲージ作用および標準ウィルソンクォーク作用を用いた数値シュミレーションを行ない、ハドロン相・クォーク・グル-オンプラズマ相間の相転移(特にその次数)の研究をおこなった。 クォーク数2の場合の主要な結果は以下の通りである。 1.クォーク質量の広い領域に渡って転移は滑らかである。この点は標準作用に対して得られていた結果と異なる。 2.クォーク質量を小さくしていくと、相転移点上のパイ中間子スクリーニング質量は滑らかにゼロに近付く。このことは、1.の結果と合わせて、ゼロクォーク質量での相転移が連続であることを意味する。 3.カイラル凝縮(相転移の秩序パラメータ)は、理論的に予想されていた様に、3次元のO(3)スピン模型の臨界指数をもったスケーリング則を満たす。これは、クォーク数2のQCDのカイラル相転移次数が2次である事を、強く示唆する。 また、軽いu,dクォークに加え、重いsクォークが存在する場合の転移次数についても調べ、転移次数が1次であるとの結論を得た。 さらに、絶対零度でのQCDの相構造のクォーク数依存性を調べた。1)クォーク数が7以上でクォークの閉じ込めが破れること、2)17以上で理論がトリビアルになっている事、を示唆する結果が得られた。
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