大気ニュートリノは、一次宇宙線が大気に突入したときに大気中の原子核と相互作用をして生成されたπ中間子がミューオン、電子へと崩壊する時に生成されるものである。大気ニュートリノ中のミューオンニュートリノと電子ニュートリノの強度の比はほぼ2:1であることが理論的に予言されているが、カミオカンデの実験結果は上記の比が約1.2:1である。これは本当ならニュートリノ振動と考えるのが最も自然であり、きわめて重要な実験結果である。 本研究においては、大気ニュートリノのフラックスの精密計算、大気ニュートリノに対する中性子起源のバックグラウンドの精密な評価、高エネルギーの大気ニュートリノが生成した宇宙線上向きミューオン現象の解析とそのニュートリノ振動の解析等多方面からの解析を行い、大気ニュートリノデータをニュートリノ振動と解釈して矛盾が無いか否かを精密に検討してきた。その結果、大気ニュートリノに対する中性子のバックグラウンドは約1%以下で無視できること、また上向きミューオンのデータは測定器内での大気ニュートリノ相互作用の解析で得られている結果と矛盾しないことが判明した。これより、現在のデータは大気ニュートリノデータはニュートリノ振動と解釈して矛盾ないという結論を得た。またニュートリノ振動のチャンネルはミューニュートリノと電子ニュートリノあるいはミューニュートリノとタウニュートリノ間の振動のどちらと解釈しても現在のデータでは矛盾ないことが判明した。
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