現在の素粒子論の理論的基礎を与えるゲージ対称性を持つ理論(非可換ゲージ理論、弦理論、重力理論など)は、場の理論にとって不可欠な枠組みである正準形式(ハミルトン形式)において、すべて拘束系として記述される。本研究には、大きく分けて2つの目的がある。第一に、従来から知られているDiracの縮小位相空間に基づく理論的取扱いではこれらの力学系の量子化が困難であることを踏まえて、ゲージ理論の基本的対称性であるBRST対称性に立脚した拘束系に対する一般論である「一般化正準形式」を整備することである。この「一般化正準形式」の理論は、ロシアの研究グループにより開発されたが、一般論の展開が中心で具体的問題へは適用されてこなかった。そこで、第二の目的として、特にこの理論を(超)重力理論、位相的場の理論、弦理論等に適用し、これらの理論の量子化を研究することである。研究期間の平成7-8年度の2年間で、1)2次元重力理論の超対称版である2次元超重力理論の量子化、2)反対称ゲージ場理論である位相的BF理論のゲージ異常項の解析等の問題に取り組んだ。1)については、ゲージ異常項によって第2種拘束系となった理論を第1種拘束系に転換するという方針で目標とした「異常ゲージ理論としての量子化」を達成した。結果を論文としてまとめ、その成果を平成7年10月、京都大学数理解析研究所で開催された「BRS20周年記念国際シンポジウム」で発表した。また、2)については、解析結果を平成7年日本物理学会秋の分科会で発表した。
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