本研究では特にバレー法による量子力学の解析に進歩があった。トンネル現象がある場合には、一般に虚時間経路積分法が有用であると考えられている。しかし、従来知られているインスタントン、バウンスを使った計算には各種の不備がある。これらを克服するものとして本研究者は「バレー法」を確立した。今年度は、この方法により、一次元・非対称2重井戸ポテンシャル問題を詳細に解析した。その結果、以下が判明した。 ・トンネル効果による非摂動的影響は、バレー・インスタントン/バウンス解によって取り入れることができる。 ・上の効果は、バレー・パラメータの解析接続により、摂動的効果と完全に分離される。また、この解析接続により、上記の相互作用の遠距離での主要項のみで計算が可能となる。 ・この解析接続を通じて、バレー積分による特異性から、摂動論の漸近的振舞いがわかる。その結果は従来考えられてきたものと異なる振舞いをする。 ・この漸近的振舞いを直接の摂動級数の300次までの代数計算で確認した。 これらによって、量子論における摂動論的効果と非摂動論的効果の分離/相互関係の一般的様相が判明したと考えられる。
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