本研究計画は、ゲージ場理論および量子重力理論に期待される非摂動論的ダイナミクスを「純ゲージ模型」なるものを用いて解析することを目的としている。この「純ゲージ模型」とは、ゲージ場理論ではゲージ場Α_μ(x)を純ゲージの配位Α_μ=g^+∂_μgに、また重力理論では計量場をg_<μν>(x)=∂_μξ^α(x)∂_νξ^β(x)h_<αβ>(ξ(x))に、それぞれ制限した、一種のトポロジカルな場の理論の模型である。 今年度は、純ゲージ模型を重力場理論に応用し、「4次元純ゲージ重力場模型で一般座標不変性が回復した、高い対称性を持った相(unbroken phase)が実現し得るか?」という問題に取り組んだ。具体的には、重力場g_<μν>(x)を純ゲージ配位g_<μν>(x)=∂_μξ^α(x)∂_νξ^β(x)h_<αβ>(ξ(x))に制限した模型を考察し、base計量h_<αβ>(x)が4次元球面をあらわす場合は、(i)摂動論的に於ては〈ξ^α(x)〉∝X^αというbroken phaseにあるが、(ii)非摂動論的な真の真空においては〈ξ^α(X)〉=0なるunbroken phaseが実現しうる事がわかった。現在は、base時空が4次元球面であるという制限をどこまで緩めることが出来るかどうかを探っている。この点が明らかになり次第、結果を論文にまとめたい。 また、本来平成8年度の研究計画に予定していた、「純ゲージ模型を出発点として、ゲージ場(重力場)のゲージ変換の方向以外の揺らぎを順次取り入れていけるような展開方法の開発」については、ゲージ場(Yang-Mills場)理論におけるカラー閉じ込めに応用して、ある程度満足の行く議論ができ、既に論文として発表した。具体的には、「純ゲージ模型」を第0近似とし、ゲージ方向以外の場の揺らぎを逐次取り入れていくような、系統的な摂動展開を構成し、この摂動展開の範囲内でカラー閉じ込めが成り立っていることを示した。これを更に発展させ、また最も興味深い重力場理論あるいは弦理論にまで応用する事は平成8年度の課題である。
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