本研究ではGeV領域電子散乱における核子共鳴状態に関する研究を行なた。共鳴粒子の電磁形状因子、あるいは原子核内におけるこれらの粒子の相互作用をとおして、共鳴粒子の構造を検証することを目的とする。これらの共鳴粒子は、パイ中間子と核子の散乱状態にありパイ中間子-核子のユニタリな散乱模型、ゲージ不変な電磁相互作用の取り扱いに基づいた解析により初めて、共鳴粒子の構造を議論することができる。 我々が開発したユニタリ変換の方法は中間子-核子に対するエネルギーに依存しない強い相互作用、電磁相互作用に対するアイソバ-模型の有効ハミルトニアンを導き中間子電磁発生反応の解析に不可欠なつじつまのあった枠組をあたえる。 本年度の研究ではユニタリ変換の方法を用いたπ核子散乱、π中間子発生反応の有効ハミルトニアンを導いた。これを用いてデルタ共鳴領域におけるπ核子散乱を解析し、特に従来困難であったP11チャンネルを含むS、P波散乱を良く再現しこの定式化が有効であることを示した。さらに得られた強い相互作用の模型をもとに、π中間子光発生反応を解析し、デルタ共鳴領域における、偏極をふくむ観測量をよく再現することを示した。その結果主に最近のBrookhaven研究所による実験結果よりデルタ粒子に対するγNΔ結合定数、およびデルタ粒子のD波成分によるE1^<(+)>/M1^<(+)>に関する知見を得た。得られた結合定数は、従来の解析とは異なりクォーク模型から予言される値に近く、ユニタリな解析が重要であることがわかった。この結果は次年度に計画しているS11N^*共鳴領域の研究においても我々は行なった方法による解析が不可欠であることを示唆している。
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