宇宙気体現象を研究するために数値流体力学のさまざまな手法が開発されている。それは主としてオイラー法にもとずく差分法とラグランジュ法にもとずく粒子法に分類できる。天体物理学で多用される粒子法としてはSPH法がある。本研究では、それとは別の粒子法の可能性を求める研究を行った。それをボロノイ・ラグランジュ法となずけた。このアイデアは松田が1985年に提唱したものである。まず2次元以下の場合に限定した。n個の点をばらまき、そのボロノイ分割を求めるプログラムを作成した。ボロノイ分割のアルゴリズムにはさまざまあるが、ここでは逐次添加法を採用した。この場合、計算時間は普通はnの1.5乗に比例するとされている。しかし工夫の結果、計算時間は粒子数nに比例することができた。このことは粒子数が増大しても計算時間があまり増大しないということであり、計算上有利である。SPH法においても近接粒子を求めなければならないが、単純な手法では計算時間はnの2乗に比例する。ツリー法などを用いるとそれがnlognに比例する。ワークステーションによるわれわれの実測では、粒子数が5000点の場合、計算時間は10秒以下であった。これはSPH法と十分に対抗できることを示している。実際の2次元の数値流体力学プログラムは現在作成中である。しかし1次元の場合、衝撃波管問題を解き、良好な結果を得ている。
|