最近、衝突型加速器における高エネルギー物理学実験用の検出器ではシリコン・マイクロストリップ検出器を多数使用する。加速器のビーム強度が飛躍的に上がりそれにともなって検出器の放射線損傷が大きな問題となってきた。特に半導体検出器は放射線損傷の影響が大きい。半導体検出器の放射線損傷にはバルクの損傷と表面損傷があり、前者はかなり研究が進んでいるものの表面損傷に関しては我々がその重要性を指摘するまで研究されていなかった。 表面損傷を研究するために、両面読みだしAC結合のシリコン・マイクロストリップ検出器に^<60>Coのガンマ線を照射して主にイオン化効果を起こさせた。荷電粒子を照射するとシリコン結晶の損傷が大きく、また大線量ではバルクの半導体型の反転が起こる。イオン化効果を研究するにはガンマ線照射が有利である。ガンマ線照射実験は広島大学工学部の照射設備で3回行った。 検出器のノイズが急激に増大する現象を吸収線量別にまた温度をコントロールして詳しく観測した。また、検出器の半導体としての基本特性(暗電流、空乏化電圧)も測定した。 次に、高エネルギー物理学研究所において陽子シンクロトロンで得られるパイ粒子線を用いて、イオン化効果による表面損傷を持つ検出器のビームテストを1回行った。分解能、S/N比、検出効率を放射線損傷のないものと比較する為のデータをとった。 現在これらのデータの解析途中であるので最終結果ではないが、読み出し電極及びマイクロストリップの形状を強電場をシリコンバルクから絶縁体へ追い出すようなものにするとノイズの発生を抑えられることがわかった。この後これを確認し最適な形状を求めている為の検討を行う必要がある。ビームテストでは放射線損傷のある検出器において分解能、S/N比の低下が認められた。
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