本研究は、太陽ニュートリノ実験、大気ニュートリノ実験、加速器ニュートリノ実験、原子炉ニュートリノ実験のデータを検討し、レプトンの世代混合を質量行列のモデルで系統的に研究するものであった。このテーマに関して、以下のような研究成果が得られた。 1.超対称性標準モデルでは、繰り込み群によってニュートリノのフレーバー混合がGUTスケールからEWスケールの間でかなり大きく変化する。たとえば、GUTスケールで第2世代と第3世代の混合角がsinθ【greater than or equal】0.27であるならば、繰り込みの効果によって、大気ニュートリノの異常を説明できる混合角の大きさがEWス 2.ニュートリノの質量に階層性があると仮定した場合、大気ニュートリノ異常の実験とLSNDにおける実験結果を同時に説明することができる質量行列のモデルは、CHORUS/NOMADでのニュートリノ振動は観測されないことを予言する。すなわち、CEORUS/NOMAD実験でニュートリノ振動が観測された場合、大気ニュートリノ異常の実験またはLSNDにおける実験結果のいずれかが間違いであることが判明する。 3.ニュートリノの質量を説明するZeeモデルは、大気ニュートリノ異常とLSNDの実験を再現する。その時、CHORUS/NOMAD実験でのニュートリノ振動は小さくて観測できない。このモデルにsterileニュートリノν_sを加えることにより、太陽ニュートリノ問題が解決できる。 4.ニュートリノ振動におけるCP対称性の破れは、Long Baselineの実験で観測される可能性がある。この場合、地球の物質効果が重要になるが、第3世代と第2世代のニュートリノの質量が1eV程度であればその効果は小さい。しかし、第2世代のニュートリノの質量が0.1eV程度であるならば、この効果は大きくなりCP対称性の破れの実験に深刻な影響をおよぼす。
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