1.QCDと多くの力学的類似性を有する2次元CP^1模型を対象として、トポロジカル項(θ項)を含む場の理論の相構造をモンテカルロ法を用いて研究した。作用がθ項を含む場合は、場の更新の確率を決めるボルツマン重みが複素数になり、確率解釈が許されないという困難が生じる。この困難をトポロジカル電荷の分布P(Q)をヒストグラム法で計算することにより回避した。その際、セット法及び試行関数法を併用することにより、非常に良い精度の計算が遂行できることがわかった。その結果、強結合領域では、θ=πで非閉じ込めの一次相転移が起こることを検証し、また弱結合領域ではその転移がなくなることがわかった。今後の課題として、後者における相の性質を明らかにするために、有限体積効果及び格子間隔効果を体系的に調べる必要があり、その研究は現在進行中である。 2.θ項を含む2次元のU(1)ゲージ理論はその単純性から解析的な計算が可能で、本研究の目的にかなう簡単な模型としての性質をもつ。ここでは、モンテカルロ法と繰り込み群の二つの立場から相の性質を調べた。結合定数とθ項に対応する複素パラメータの空間での繰り込み群の軌跡の流れから、新しい赤外固定点が存在し、これがθ=πの相転移を特徴づけていることが明らかになった。また、解析的なP(Q)の計算結果と、シミュレーションの結果が一致する事を確認し、1における方法の正しさの検証になっていることも確かめられた。繰り込み群の軌跡の流れは特異的な振る舞いを示し、このことはθ項を含む場の理論を繰り込み群の観点から研究することの必要性を示唆している。
|