研究概要 |
炭素電極にFe/Ni(重量比1:1)及びCo、Laを混ぜてヘリウム雰囲気中でアーク放電させ、単層ナノチューブを作製してラマン散乱測定を行った。チューブの直径はFe/Ni、Co、Laでそれぞれ平均1.1.1.3,2.0nmであった。その結果多層チューブでは、炭素原子間の伸縮振動によるラマン散乱ピークがグラファイトの場合と同様に1580cm^<-1>付近に一本観測されたが、単層チューブではグラファイトピークの両側に分裂して観測された。分裂の大きさはFe/Niで一番大きく、Co、Laになるまでに従って小さかった。この分裂は以下のように説明できることがわかった。 平坦なグラファイト1層の格子振動を考えるとラマン活性モードは1580cm^<-1>の1本である。このモードは光学分枝の分散曲線上でk=0の振動に相当する。一方、グラファイト1層が円筒状に閉じたナノチューブでは円周に沿って新たな長周期境界条件が生じる。このため、Brillouin域の円周に相当するK方向でその長周期分の1の波数を持つ音子の振動もラマン散乱活性となる。従って本研究により、ナノチューブでのみ活性となる格子振動が初めて観測された。又、上記の結果からラマン散乱測定により、ナノチューブの直径をサブナノメータ(炭素6員環の)尺度で見積ることが可能となった。この分光法により、アーク放電で生成される単層ナノチューブが成長する場所によって直径に違いのあることが見出され、サイズの異なるチューブを場所を規定して分離出来ることがわかった。
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