研究概要 |
本研究の目的は単一サイズのナノチューブを作製し、その電子的物性を光吸収、反射、発光、ラマン散乱分光により明らかにすることである。層状の、黒鉛結晶が丸まって円筒状に閉じた形をしている炭素ナノチューブは、小さいもので直径が0.68nmのものまで見つかっている。このようにサイズ的にも次元的にも極端に制限を受けたナノメータ尺度の物質は3次元的に周期性を持つバルク結晶とは著しく異なる物性を示すと予測される。 単層のナノチューブは黒鉛1層のシート(Graphene)を丸めて繋いぎ合わせたものである。従って、直径の充分大きいナノチューブは平坦に広がった黒鉛シートとほぼ同じ物性を示すと考えられる。直径がナノメータ尺度になると円筒の円周方向と軸方向の周期境界条件の違いが著しくなる。更に、炭素間の結合様式も平面的なSP2混成軌道からずれてくる。炭素電極にNi, Fe, Co, La等を混合してアーク放電を行い、直径が1.1nmから2.0nmの単層ナノチューブを作製した。得られた試料の共鳴ラマン散乱効果を観測して電子状態を解析し、ナノチューブ特有の材料機能を明らかにした。
|