研究概要 |
本研究では単一サイズのナノチューブを作製し、その電子的物性をラマン散乱分光により明らかにした。試料は炭素電極のアーク放電で作製したがその際、電極内に入れる金属の種類を変えることにより直径の異なるほぼ単一径のナノチューブを得て、直径に依存する物性を実験的に解析することが出来た。得られた主な成果は既にPhysical Review等に発表済みであるが、要点は以下の通りである。 1.金属入り炭素電極のアーク放電で、金属の種類を変えることにより直径が1.1nm,1.3nm、及び2.0nmに制御されたほぼ単一径の試料を得ることが出来た。 2.上記試料のラマン散乱測定を行い、散乱ピークの分裂からナノチューブの円筒対称性に起因する離散的な音子分散関係の存在を明らかにした。 3.この離散的分散関係はグラファイトの分散関係から導き出された値と一致することから、ナノチューブがグラファイト1層を丸めて閉じたものであることを分光学的に実証する結果となった。 4.音子の分散関係が離散的になることに対応してナノチューブの電子状態も円筒対称性を反映して準離散的な状態をとることを共鳴ラマン散乱の測定より明らかにした。 5.ラマン散乱強度の共鳴波長より、準離散的電子状態の位置を求め、その値が直径に依存することを突き止めた。
|