励起子分子はその二光子共鳴の効率の高さで有名であり、高速光スイッチやスクィーズド光発生素子として注目されている。ところで、この大きな光学的非線形性は20年程前に花村によって理論的に予言され、実験的に見出されたものであるが、そのメカニズムについて最近イワノフらによって新しいモデルが提唱され、議論を呼んでいるところである。この大きな非線形性の起源を明かにすることは励起子分子の物理を進展させる上でもこれからの応用を考える上でも不可欠と考えられる。そこで本研究において各モデルの妥当性の検証を実験的に試みた。 具体的には各モデルの特徴が顕著に現れる以下の点について、励起子分子系のモデル物質であるCuC1を用いて精密な測定を行い、理論的予想との比較を行った。 1 励起子分子の非縮退二光子吸収係数の評価とその励起光エネルギー依存性。 2 波数ゼロ近傍における励起子分子の分散。 1については、その成果が8月、オーストラリア、ケアンズで行われた固体の励起状態の動的プロセスの国際会議(DPC'95)で報告された。 本研究により、励起子分子の二光子励起モデルとして新しいモデルがより妥当であるということが明らかになり、励起子分子の関与する物性現象が定性的のみならず定量的にも理論との比較がなされるようになった。また、一部には理論と実験結果との不整合が見られ、新たな研究の糸口が見い出されたところである。
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