研究概要 |
Si(111)表面におけるIII〜V族共有結合性原子の吸着構造として,結合の歪みが小さいと思われる5種類の吸着模型を取り上げ,第一原理的電子状態計算にもとづき全エネルギーの値を求めて,これらの吸着構造の安定性の違いを調べた。計算はノルム保存型擬ポテンシャルを用い,最大3.4a_B^<-1>の範囲の波数をもつ平面波によって波動関数を表現した。 実際の計算は,III族原子としてGa,IV族原子としてGe,V族原子としてAs,Sbを使って行った。これらの計算を通して,吸着原子種によらない共通の史実として (1)Si最外層の2種類の窪み位置に単原子吸着した模型においては,下地Si原子の緩和はきわめて大きく,特に吸着位置が第2層Si原子直上の場合は1eV以上ものエネルギー変化を与えることがある。 (2)3量体吸着や置換型吸着の場合は,下地緩和効果が小さい。 (3)吸着模型間の安定性比較は,吸着エネルギーの絶対値として信頼できる値が得られないような3.1a_B^<-1>程度の平面波波数打ち切り値でも,充分な精度で行うことができる。などが確認された。 しかし各吸着構造間の相対的エネルギーには,吸着原子種の違いが強く反映される場合もあった。吸着原子がSb,Ga,Geの場合は,価電子数が違っていても5種の吸着構造間の安定性の順序はほぼ同じであったが,Asの場合はその順序が他の吸着原子の場合と異なっていることが確かめられた。 吸着初期段階での各吸着原子の量安定構造は,Asについては最外層SiをAsに置き換えた1×1周期構造,Sb,Ga,Geについては第2層Si原子の真上に単原子吸着させた√<3>×√<3>周期の超格子模型であった。
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