研究概要 |
最外内殻Ba^<2+>5pホールへの価電子帯電子の輻射遷位によるクロス発光はオージェ効果(無輻 射遷位)と競争過程になるが、kubotaら(日本1992)はBaF_2並びにCsFでは最外内殻レベルは浅い上、充分な幅がないためオージェ効果は許されないと指摘した。我々は、最近、クロス発光励起スペクトルと相補的関係にある光電子放出収率の高分解スペクトルをBaF_2で調べ、励起光エネルギーがバンドギャップEgの2倍、2E_8より高エネルギー域でオージェ効果の寄与を観測し、クロス発光(Nunoya 日本1992)の急激な減少と符合することを確認した(A.Ejiriら、J.Phys.Soc.Jpn.1995)。これは上述のkubotaらの指摘を覆すと共に、Ba^<2+>5p内殻レベルの幅がみかけ上かなり広いことを示し、注目を集め、固体内電子状態としては特異であり、クラスター模型を用いた内殻レベルの理論的研究(Ohmura、日本 1994)を誘起している。 従来、シンチレーター物質の発光機構解明の研究が主に発光現象を中心に進められて来たのに対し、本研究は発光との関連で光電子放出収率を調べて、価電子帯ホール、内殻ホール及び内殻励起子の緩和過程のダイナミックスを多面的に捉えて居る点が特色と言える。BaF_2の発光機構解明に関して、従来のC.Shiら(西独)やS.Kubotaら(日本)の発光現象中心とした研究成果に加えて、光電子放出測定から(イ)クロス発光条件の破れ、(ロ)内殻準位の広い幅、(ハ)光電子収率とSTE発光の競争過程等の新しい知見(Ejiri et al:J.phys.Soc.Jpn.1995,同じく、J.Electron Spect.Petated Phenom.1996)が得られたことは、放射線物理やクロス発光応用の分野の今後に大きな影響を及ぼすと思われる。
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