研究概要 |
1993年度にロシア人Andre Palnichenkoとともに創製し、命名した擬一次元炭素結晶カルボライトの物性開発のため平成7〜8年度の本研究費を受けた研究の概要を記す。 研究はカルボライトの電気的物性、インターカレーション物性および磁気的物性について主におこなわれた。 (1)単結晶サファイヤ基板に生成させたカルボライトの基板面に平行に入射したX線の回折から炭素鎖間距離0.34nmが得られ、炭素鎖配置に関する初期からの仮定が実証された。 (2)カルボライトは光学顕微鏡下で半透明で橙色に帯色しているので、その電気的本性は半導体であり、固有ギャップは2eVていどである。しかしサファイヤ単結晶上にクエンチしたカルボライトの、炭素鎖が平行にそろった試料の鎖垂直方向の抵抗の温度依存性から不純物励起エネルギーは0.31〜0.43eVと測られた。 (3)研究の初期にカリウムをインターカレートした試料で約10Kに始まる超伝導を見いだしたが、十分インターカレートした試料で再度こころみたが超伝導はみられなかった。適度なインターカレーションが必要のようである。 (4)インターカレーションはNa,K,Rb,Csについておこなわれ、抵抗対反対時間の形は定性的にどの場合も同じで、初期抵抗のほぼ10MΩが約1時間後に数100KΩに下がり、それから数10時間のほぼ一定に保たれるプラトウの後、急に数KΩに低下する。インターカラントは炭素鎖間に侵入すると考えられるが、詳細な機構はプラトウの成因とともに研究の余地を残す。 (5)Kを十分インターカレートさせた試料で磁性を測定した。磁化率χ対逆数温度1/Tのプロットは直線となった。一定項と直線傾斜項とからなり、一定項はたぶん試料容器からの一定磁性であり、傾斜項から試料は-1.25Kのキュウリ-・ワイス温度をもつ反強磁性を示すことが知られた。
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