研究概要 |
平成8年2月までに,分布を持った磁場下の量子ホール効果の電流依存性と温度依存性の測定を,電流範囲10nA〜50μA,温度範囲50mK〜4.2Kで行い,解析の結果,電流分布の電流依存性,温度依存性について,半定量的な結果を得ることができた. 磁場分布は,Bi系高温超伝導体の単結晶を,試料の上に貼り付けることによって作った.試料電流あるいは,温度を増大させたとき,通常の試料と比較して,超伝導体付き試料では,ホール抵抗のプラトー間の遷移領域が高磁場側へシフトした.このシフトの電流依存性と温度依存性の比較から,電流増大の効果は,実質的に温度増大の効果であることが分かった.また,高温超伝導体の作る磁場分布と電流分布を仮定したモデル計算により,このシフトを再現することができた.実際の磁場分布を調べるために,多端子ホール素子を新たに作製した.予備的な測定の結果,計算に用いた磁場分布が良い近似になっていることが確かめられた.モデル計算に基づく解析の結果,バルクエッジ電流が存在することが示され,このバルクエッジ電流が,温度の増大と共にバルク領域へ広がることが示された.さらに,高電流では,電流分布がほぼ一様になることが明らかとなり,これまでの量子ホール効果のブレークダウン実験の報告のうち,電流分布一様説を支持する結果が得られた.
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