焼結法によりNd_<2-X>Ce_XCuO_<4-δ>試料をCe濃度Xが0<X<0.2の範囲で作製し、X線回折、SQUID、電気抵抗率、熱伝導率などの測定を行った。0<X<0.2の範囲のCe濃度ではT相の単相が得られ、Xの増加に伴い電気抵抗率が大きく低下した。熱伝導率は温度の低下とともに増大し約30Kで極大値を持つ一般的傾向を示すが、0<X<0.15の範囲ではXの増加に伴い極大値は増大し、X>0.15ではXの増加に伴い極大値は減少することがわかった。Tewordt&Wolkhausen(TW)の理論により熱伝導率のCe濃度依存性を解析した結果、0<X<0.15の範囲での熱伝導率の極大値の増大は、結晶粒の増大によるフォノンの境界による散乱の減少が主に支配しており、X>0.15での熱伝導率の極大値の減少は、主に合金効果によるフォノンの点欠陥による散乱が増加し、さらに電子によるフォノンの散乱も無視できないことがわかった。今後はCe濃度がXが0<X<0.2の範囲でのNd_<2-X>Ce_XCuO_<4-δ>焼結試料の作製および熱伝導率に関する評価はすでに終了したが、さらにCe濃度がX>0.2の範囲での検討および、超伝導性を示すX=0.15付近での熱処理条件(クエンチやアルゴンガス中での熱処理)と超伝導特性、磁気的特性の関係や、それらの熱処理条件の違いが熱伝導率、熱拡散率にどのように影響を及ぼすかなどの系統的な検討が残されている。Nd_<2-X>Ce_XCuO_<4-δ>結晶の熱拡散率は他の酸化物超伝導体に比べて約1桁大きいため、試料と熱浴との接触熱抵抗の問題や高速な温度計測の問題が明らかになってきた。これらの問題を解決することで、正確な熱拡散率の測定を行い、比熱の算出や、熱伝導率、熱拡散率の結晶構造との関係および、電子・格子相互作用とフォノン散乱機構を明らかにする。
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