銅を含まない酸化物でありながら高い超伝導転移温度(T_<Cmax>≒32K)をもつ超伝導性酸化物Ba_<1-x>K_xBiO_3系を対象に、その広い組成域(半導体〜超伝導体)で、光吸収、ホール効果と、超伝導分野では新しい手法である半導体相における光伝導度と光伝導ホール効果の測定を行うことにより、光遷移の起源、伝導担体の種類と伝導機構を明らかにし、未だ十分に理解されていない本系の電子状態、電子構造を明らかにすることを目的とした。 今年度に行った研究を、以下、研究実施計画に沿って記す。 1.広い組成範囲での良質なBa_<1-x>K_xBiO_3系単結晶の合成を目的として、電気化学合成法による合成をさまざまな条件下で行い、半導体相から超伝導相にわたる広い組成範囲でカリウム欠損の少ない単結晶を得た。雰囲気(湿度)により結晶組成を低X側へと大きく変えられることを新たに見いだすなど、合成に関する新たな知見も得られた。これはより広い組成範囲での物性測定を可能にすると同時に、この方法は制御性に優れているので超伝導体/半導体構造をもつ結晶成長型素子の試作へと研究を展開している。 平成7年度購入の設備備品および消耗品を利用し、ホール効果および半導体相における光伝導度とその磁気効果の測定を行うための測定系を整備した。 超伝導相のBa_<1-x>K_xBiO_3単結晶を用いて電気伝導度、ホール効果の測定を行った。良質の単結晶による実験で電気伝導の本質が観測できるようになり、詳細な解析から伝導電子-フォノン相互作用についてのより深い知見が得られた。電気化学合成法により始めて合成が可能になった半導体相Ba_<1-x>K_xBiO_3の単結晶を用いて、Ba_<1-x>K_xBiO_3で光伝導を始めて観測した。磁気効果、分光を含む詳細な研究は次年度に行う。
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