銅を含まない酸化物でありながら高い超伝導転移温度(Tc_<max>=32K)をもつ超伝導酸化物Ba_1-xKxBiO_3系の、未だ十分に理解されていない半導体-超伝導体転移のメカニズム、キャリアの伝導メカニズム、電子状態や電子構造を明らかにすることを目的として、1.広い組成範囲(半導体〜超伝導体)での良質な単結晶の合成と、2.広い組成域での電気伝導度、ホール効果、光吸収、磁化率、光伝導度と光伝導度磁気効果の測定、解析と考察を行い、以下の成果を得た。 1.Ba_1-xKxBiO_3系単結晶の合成を、電気化学合成法によりさまざまな条件下で行い、半導体相から超伝導相にわたる広い組成範囲でカリウム欠損の少ない単結晶を得た。雰囲気(湿度)により結晶組成を低X側へと大きく変えられることを見い出すなど、合成に関する新たな知見も得られた。これはより広い組成範囲での物性測定を可能にしたと同時に、この方法は制御性に優れているので超伝導体/半導体構造をもつ結晶成長型素子の試作へも研究を展開した。 2.超伝導相のBa_1-xKxBiO_3(x=0.4)単結晶によるホール効果の詳細な解析から、超伝導相の伝導電子-フォノン相互作用におけるLOフォノンの重要性を示した(論文投稿中)。電気化学合成により始めて合成が可能になった半導体相Ba_1-xKxBiO_3(x<0.3)の単結晶を用いて、ホール効果のx-依存性、温度依存性がはじめて測定された(論文準備中)。低温でのキャリアは正孔であるが、その有効質量が極めて大きいことがわかった。xの増加とともに半導体相でも電子が伝導に寄与しはじめ、超伝導相へとつながることがわかった。半導体相Ba_1-xKxBiO_3の単結晶を用いて、光伝導を始めて観測したが、フォトキャリアの易動度は極めて小さく測定できなかった。フォノン周波数、XPSの解析よりBaBiO_3が42%の共有結合性をもつことを示し、CDW電子状態に対して再考の必要性を再確認した。
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