研究概要 |
正方晶Ce_5Si_3はCeに2つのサイト(4(c),16(l))があり、1.3Kの磁化過程で4T付近でメタ磁性的な振る舞いを示す。また、2.5K,10Kに比熱の異常が観測される。Ce_5Si_3が低温で示すメタ磁性は昨年度までの我々の研究でdimer modelにより定性的に理解できることを、1.3K以上の磁化測定、0.5Kまでの磁場中比熱測定により明らかにしてきた。今年度は、メタ磁性の原因を定量的に理解するとともに2つのCeの役割を明らかにする目的で研究を進めてきた。そのために装置開発として、新しく^3He温度(0.5K)までの交流帯磁率(Hartshorn Bridge法)、磁化測定(引き抜き法)の装置を完成させ、それらの測定を可能とした。その結果、1.5Kで4T付近で見えていたメタ磁性は0.5Kでは顕著になることが明らかになったが、メタ磁性を示す前の4T以下での磁化の振る舞いはdimer modelで予測されたものとは大きく異なっていた。これは、Ceの4(c)サイトによる効果であると考えられる。また、試料の質とメタ磁性の関連を調べるために精密なX線解析シミュレーションを行った結果、試料が純良なものほどメタ磁性が顕著になり、10Kでの比熱の異常もはっきりしてくることがわかり、メタ磁性と試料の質10Kでの比熱の異常の関連が強いことが明らかになった。さらに4(c)サイトのCeの役割を明らかにするために、最近トリアーク炉を用いたチョクラルスキー法により単結晶育成を試みた。その結果、試料の質はまだ十分とはいえないが単結晶の育成に成功し、磁化測定の結果大きな異方性を確認することが出来た。単結晶試料の純良化、^3He温度までの磁場中比熱、磁化、交流帯磁率測定を行うことにより、メタ磁性の機構、Ceの2つのサイトの役割を定量的に理解することが可能となる。これらの成果は現在、関連雑誌に投稿準備中である。
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