Euは希土類の中で価数揺動を起こす元素のメンバーのひとつであり、その価数の温度変化が著しいことが特徴である。我々はEuの2価と3価における磁気モーメントの差が大きいことに着目し、磁場による価数転移の可能性を調べてきた。本研究によって以下のような結果を得た。 1)価数が170K付近で急激に変化するEuPd_2Si_2が、温度10Kで磁場93Tのもとで磁場誘起価数転移することを見いだした。この価数転移は一次転移であり、この系の価数の温度変化は連続的であることと対照的である。 2) Eu (Pd_<1-x>Pt_x)_2Si_2系において転移のシャープさを損ねることなく価数転移磁場を減少させることに成功した。また、この系では価数転移磁場と価数転移温度は比例関係にある。さらにメスバウアー効果の結果、基底状態の価数はPt置換によってほとんど影響を受けないが、温度変化は一次転移的になることを明らかにした。 3) EuNi_2 (Si_<1-x>Ge_x)_2という系においても低温において磁場誘起価数転移を見いだした。この系では0.7<x<0.85において温度による急激な価数変化が観測される。Ge量を細かく変えることにより、転移磁場を40T以下に制御できることを示した。またこの系においても転移磁場と転移温度の間に比例関係があることを見いだした。 4)このような温度と磁場による価数転移をこれまでに提唱されている配置間揺動モデル(ICFモデル)により議論した。その結果ゼーマンエネルギーを取り込み、励起エネルギーが励起状態の占有率に依存するという仮定をおくと、温度と磁場による価数転移が矛盾なく説明されることを見いだした。
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