研究概要 |
最近,モット転移の典型物質と考えられていたV_2O_3系の金属相において,銅酸化物の金属相で見られるのとよく似た異常なふるまいが報告されている.銅酸化物の金属相での種々の異常は2次元のネストしたスピンゆらぎの理論により統一的に説明することができるので,それを3次元の場合に適用した.その結果,2次元の場合に比較すると弱いが,銅酸化物と類似の異常なV_2O_3系のふるまいをコンシステントに理解することが可能であることが分かった。 銅酸化物の中間結合領域に属するのではないかということが,(もっともらしいパラメタの値をもつ)dpモデルに対してGutzwiller近似を適用した結果とNQRによる局所電子数密度の実験との一致から示唆される。そのような領域では,いわゆるモット転移の主な原因はBrinkman & Rice的な局所相関ではなくネスティングを伴う反強磁性相関にあると考えられる。一方,ハーフ・フィリングにおいては、T>T_Nにおいても電気抵抗はフェルミオンの一体励起に【less than or similar】eV程度のギャップが存在することを示している。これが矛盾しないことを示すため,3次元ハーフ・フィルドのハバ-ドモデルの反強磁性基底状態の性質のクロスオーバーを調べた.その結果,T〜T_Nにおいてフェルミオンの一体励起がギャップをもつ条件として,U>U_<cr>=1.64D(2Dはバンド巾),が得られた。これをBrinkman & Rice(または、d=∞理論)の臨界値U_<BR>=2.67D(3.0D)と比較すると,U_<cr><U<U_<BR>を満たす斥力Uはかなり広い範囲に分布し得ることを示している。
|