研究概要 |
格子歪みを伴ったスピン・パイエルス相転移の発生機構とその特徴を、1次元量子反強磁性物質とみなされる、CuGeO,ならびに三角格子反強磁性体とみなされるNaTiOに見出された興味ある実験結果を視野に入れ、理論的な考察を行った。 1.1次元量子反強磁性体のスピン・パイエルス相転移について:スピン演算子をフェルミオンに変換して、一般化された帯磁率を計算した。格子の歪みに伴って生じる静的帯磁率の異常な温度依存性、ならびに励起エネルギーにおけるギャップの存在をXYモデルの場合について厳密に示した。動的な振る舞いについては、x(K,w)の計算によりパイルス相での特異性を明らかにした。これについては、中性子の非弾性散乱の実験等により実証されることが期待される。Heisenberg系については、Hartree-Fock近似の範囲で理論を展開し、CuGeOの実験結果との定量的な一致が得られた。 2.三角格子量子反強磁性体について:格子変位の自由度を2×1の単位胞を持つダイマーのパターンを仮定し、ボゾン平均場理論のもとに6種類のRVB秩序変数、化学ポテンシャル、格子歪みに対するセルフ・コンシステントな方程式を導出した。ただし、この方程式は7元複素数非線形連立方程式であるために、単純なブレント法では数値解析が出来ない為、さらに、工夫しなければならない。 従来のスピン・パイエルス相の理論では、2種類の交換相互作用が規則格子に交互に配列された交代ボンド系に関するものであるのに対して、我々の理論は、格子歪みの安定性をも考慮するもので従来のものとは根本的に異なっている。更に、磁場効果や格子のダイナミックスを取り入れた理論を展開して行きたい。
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