研究概要 |
1.Y(123)におけるPrによる超伝導抑制効果が酸素濃度の減少とともに低下していくという実験結果を得た。また、Pr置換量が0.3<x<0.6の範囲で酸素濃度が6.6<7-y<6.75の範囲で、酸素濃度の減少とともに通常とは逆に超伝導転移温度が上昇するような異常な領域の存在が明らかとなった。 2.上記の現象はY(123)のみの特異な現象ではなく、YサイトをYとほぼ同じイオン半径で4f電子を有するHo,Yよりやや小さいYb,イオン半径がYとPrの中間であるGd等の希土類元素を母体とする(123)系でも同様な現象が確認された。抑制効果が希土類元素のイオン半径の増加とともに強くなっていく事と酸素濃度の減少に伴う抑制効果の低下がイオン・サイズに依存する事が明らかとなった。 3.Prとイオン・サイズがほとんど変わらないNd(123)に対するPr置換効果はNd以外の希土類の場合とは定性的に異なる結果を得た。抑制効果が他の希土類よりも強くなり、しかも酸素濃度を減少させても抑制効果は変化せず一定のままであり、これが本来のPrによる抑制効果であると考えられる。 4.Nd以外の希土類の場合、Prによる超伝導抑制効果はx>0.4の高濃度置換領域で強くなっている。しかもこの領域での抑制効果はNdの場合の抑制効果と一致することが明らかになってきた。 5.上記のすべての結果はNd以外の希土類の場合、Pr置換に伴ってCuO鎖のホールの一部がCuO_2面へ移送され、PrとOとの軌道混成によるホールのトラップ効果を緩和しているというモデルで説明できる。 6.Ndよりもさらにイオン・サイズの大きなLaに対するPr抑制効果について現在実験が進行中であり、上記モデルの正当性を今後評価していく予定である。
|