研究概要 |
フラーレン超伝導体Na2AC60(A=Cs,Rb,and K)は、室温近傍でFCC-SC構造相転移を示す。この相転移は、C60の配向に関する秩序無秩序転移である。本研究では、ナトリウムと炭素のNMR(核磁気共鳴)実験とその詳細な解析により、Na2AC60の電子状態とC60分子回転運動についての情報を得ることに成功した。C60分子は室温付近で高速回転(60MHz以上の速さ)していること、および有限のナイトシフトを示すことが分かり、Na2AC60は最初の金属的柔粘性結晶であることを結論した。さらに、超伝導転移温度と電子状態密度との関係を求めて他のフラーレン超伝導体と比較した。C60分子運動がその電子状態に与える効果については、他のA3C60と比較してNa2AC60では異常に大きいことが示唆された。しかし、その詳細な電子状態の解明には到っていない。本年度、高温用(500°C)のNMRプローブをほぼ完成したので、次年度はこれを用いて、より高温までの測定を行いその詳細を明らかにしたい。 また、C76結晶中の分子回転運動を炭素のNMR実験により明らかにした。特に、分子回転運動の不純物効果(結晶性の効果)がC60、C70の場合と異なることを見い出した。また、良質のC76結晶では170〜135Kで分子の回転凍結に関する相転移が存在することがわかった。この相転移温度は、C60、C70の場合より低い。これらの違いは、分子の対称性やカイラリティの存在と関連していることが考えられる。
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