本研究は、酸化物超伝導体単結晶の新しい合成方法の開拓を目指し、低温における電気化学的方法により銅系および非銅系酸化物超伝導体の試作合成と評価を行うことを目的とした。具体的な項目は以下の3点である。 1.種々の組成をもつBa_<1-x>K_xBiO_3系単結晶を作製し、ホール効果の精密測定を行う。 2.銅系酸化物超伝導体の単結晶の育成を試みる。 3.非銅系酸化物超伝導体の探索を行う。 上記の研究目的における1.に関しては、ほぼその目的を達成し、この物質の全組成範囲における輸送特性と電子状態を理解することができた。具体的には電気的性質が、結晶系の変化と相関があり、酸素を含めた組成が超伝導性に影響を及ぼすことを明らかにした。 目的の2.に関しては、La_2CuO_<4+δ>系およびNd_<2-x>Ce_xCuO_4系の結晶の合成に成功し、電気化学合成法が銅系酸化物の結晶作製にも適したユニークな方法であることを示した。また、この方法で作製したLa_2CuO_<4+δ>結晶は高圧酸素中での熱処理を施さなくとも超伝導を示し、as-grownの状態で超伝導性を示すに十分な酸素を含んだ結晶であることを明らかにした。 目的の3.に関しては、Nb系、Mo系、Ru系等の種々の物質の合成を試み、Ru系でBaRuO_3等の結晶の合成に成功し、現在その物性を評価している。 また、これらの研究過程で新しい「電解セル合成法」を開発した。この方法は、反応槽が一種の電池を構成していることに着目し、発生起電力を利用して結晶成長を行う今までにない方法である。この方法をBa_<1-x>K_xBiO_3系の単結晶合成に適用し、良質な結晶が作製可能であることを示した。
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