研究課題/領域番号 |
07640494
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
関根 智幸 上智大学, 理工学部, 教授 (60110722)
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研究分担者 |
田中 秀数 東京工業大学, 理学部, 助教授 (80188325)
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キーワード | スピンパイエルス転移 / ラマン散乱 / 反強磁性転移 / スピンの揺らぎ / 磁気励起 / フォノン / 磁気比熱 / 準弾性光散乱 |
研究概要 |
スピンパイエルス転移では、単位格子の2倍周期の格子変形が起こり、磁気励起にギャップが生じスピン系は-重項の非磁性になる。本研究はCuGeO_3系物質のラマン散乱より、磁気励起及び格子系の両面からスピンパイエルス転移を研究した。 第一に、転移点より高い温度でスピンの揺らぎから来る準弾性散乱をCuGeO_3の単結晶で研究し、次の結果を得た。観測された準弾性散乱はω=0のLorentz関数になる。その積分強度より、磁気比熱の温度変化を求め、第二最隣接交換相互作用を取り入れた一次元量子スピンモデルと比較検討した。又、半値幅より磁気揺らぎの相関長の温度依存性を得た。 Cuの替わりにスピンが0のZnで置換したり、GeをSiで置換すると、スピンパイエルス転移が抑圧され、低温に新たに反強磁性相が現れる事が最近分かってきた。我々は、混晶Cu_<1-x>Zn_xGeO_3、CuGe_<1-y>Si_yO_3の単結晶のラマン散乱より、この問題を研究をした。格子の倍周期化よりラマン活性になる、折り返しフォノンを調べ、つぎの結果を得た。ドープ濃度が増えると、スピンパイエルス転移温度ともに平均の格子変位の大きさが低下するが、2%以上では一定値になる。また、反強磁性相や、帯磁率でスピンパイエルス異常が観測できない試料でも、折り返しフォノンが観測できる。反強磁性相での折り返しフォノンの観測は、この相でも超格子構造が存在することを意味している。更に、ZnやSiをドープしたCuGeO_3では、選択則の破れから、磁気ギャップモードの一次ラマン散乱を観測した。ドープ量が増えると、このエネルギーは減少し、半値幅が増大した。純粋のCuGeO_3で現れた、二つの磁気励起の束縛状態からの二次ラマンピークが、ドープ量を増やすと共鳴状態になり、急速に消失する。このことは、磁気相関長が減少し磁気励起の寿命が短くなり、更に磁気励起間の引力相互作用が弱くなるためと理解できる。この事を、グリーン関数を用いて理論的に示した。
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