本年度は以下の3つのテーマにつき下記の成果を得た。 ・密度行列繰り込み群をランダム系に拡張するアルゴリズムを開発し、スピン1/2の1次元ランダム反強磁性ハイゼンベルグモデルのエネルギーギャップ分布を計算し、DasGupta-MaやFisherによる実空間繰り込み理論と一致する結果を得た。 ・上記の方法を強磁性ボンドと反強磁性ボンドが共存するスピン1/2の1次元ランダムハイゼンベルグ系に適用し、エネルギーギャップ及び基底状態でのスピンの大きさの期待値を求めた。Westerbergらによって実空間繰り込み理論によって指摘されたとおり、強磁性ボンドが存在すると基底状態のユニバーサリティクラスがランダムシングレット相から大スピン相へ変わることを確認した。また、これに基づき強磁性ボンドの割合が少ない極限でのランダムシングレット相へのクロスオーバーを議論した。 ・上記の方法を、ボンド交替のあるスピン1/2の1次元ランダム反強磁性ハイゼンベルグモデルに適用し、基底状態・エネルギーギャップを求めた。Hymanらによって実空間繰り込み理論によって指摘されたとおり、ランダムネスのある場合にもストリングオーダーの長距離秩序が残り、系がランダムタイマー相にあることを確認した。また、現在、基底状態エネルギー、エネルギーギャップの期待値、ストリングオーダーのボンド交替の強さによる変化を調べ、実空間繰り込み理論との比較を行いつつある。
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