本研究では3年問の研究期間にわたり、様々な空間構造を持つ低次元量子ハイゼンベルグモデルについて、数値的手法を中心に研究し、以下の結果を得た。 1.梯子量子ハイゼンベルグモデルで鎖間相互作用の弱い極限での臨界現象を密度行列繰り込み群(DMRG)を用いて明らかにした。 2.1次元ランダム量子系にDMRGを適用する方法を開発し、1次元ランダム量子反強磁性ハイゼンベルグモデルにおけるランダムシングレット相の存在を確証した。現在、さらに準周期系などにも拡張して研究を進めている。 3.1次元ランダム量子反強磁性ハイゼンベルグモデルに強磁性ボンドが入ったときの低エネルギー状態をDMRGを用いて調べ、比熱や帯磁率の温度依存性を議論した。 4.ボンド交替のある1次元ランダム量子反強磁性ハイゼンベルグモデルをDMRGを用いて調べた。基底エネルギー、エネルギーギャップ分布、ストリングオーダーなどのボンド交替に対する依存性を求め、スピンパイエルス不安定性がランダムネスによって抑えられることを示した。 5.1次元強磁性・反強磁性交替ボンドハイゼンベルグモデルの有限温度磁化過程を1次元ボゾン系への変換と量子モンテカルロ計算を併用して明らかにした。 6.2倍・4倍の空間周期の共存するスピン1/2の1次元ハイゼンベルグモデルの基底状態を数値対角化法により調べ、相図と臨界指数を求めた。さらに、これに基づき、スピン1/2のダイマー化転移とスピン1のハルデン・ダイマー転移の関係を明らかにした。現在、異方性及び磁場の効果について研究を進めている。 7.スピン1/2の2層量子反強磁性ハイゼンベルグモデルの基底状態と励起スペクトルに対するフラストレーションの効果を修正スピン波近似やダイマー展開法を用いて調べた。フラストレーションの強いところでは層間相互作用が弱いところまでスピンギャップ状態が残ることを示した。
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