研究概要 |
本研究は、生物分子RNAなどの高次(2次元,3次元)分子構造の形態転移などについて考察する目的から、簡単なモデルとして、等価、等量の正に帯電したモノマーと負に帯電したモノマーからなるポリマー鎖(ポリアンフォーライト)のコイル(C)グロビュール(G)転移をモノテカルロシミュレーション(ボンド揺らぎモデル、BFM)を用いて考察したものである。先ず、BFMモデルを用いて正、負のモノマーが交互に並んだ場合(a-PA)について考察し、比熱などの異常性からCG転移が確認された。次いで、欠陥のあるPAおよびdiblock copolymerについてもモンテカルロシミュレーションを行い、a-PAとの相違について興味ある結果を得た。いづれの場合もa-PAとの場合と同様にCG転移が得られるが、特に興味あるのはdiblock copolymerの場合で、この場合にはCG転移が生じるよりも十分高い温度においても比熱などに異常性が得られる。これは鎖の中央付近を頂点にして2つにおりたたまられるモードに関連している(hairpin stateと呼ぶ)。2次元、3次元モデルのCG転移についても特徴的な相違が発見された。diblock copolymerのグロビュール状態は上の2つ折り状態(hairpin state)から発展・成長していくとかんがえられるからである。その際、局所的にフラストレートした状態が得られ、これを解消していく過程で2次元系では渦巻きの形態が得られる。これら2、3次元系固有の分子の高次構造の形成・転移の本性を明らかにするため、分子の平均の慣性半径、最近接距離、各種分析関数、自由エネルギーなどの計算を行った。また分子構造のダイナミックスについての知見を得るため2つの異なる温度について分子動力学(拘束法)シミュレーションを行った。特に高温の場合はhairpin atateが形成されていく過程が明瞭に観察された。
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