研究概要 |
本年度の研究(以前から継続しているものもふくむ)によって以下のような知見が得られた. 1.表面拡散場の中を運動する直線ステップ列は,カイネティクスの非対称性(Schwoebel効果)によって不安定となるが,ステップ間に弾性力などの斥力が働くときは長波長揺らぎが不安定となる. 2.不安定化した長波長揺らぎの成長を数値計算によって追跡すると,バンチングを起こし微斜面が周期的に波打つことがわかる. 3.不安定化の臨界点付近では連続体モデルを導くことができ,ステップ密度はソリトン列やカオスを解として持つBenney方程式で記述できる.臨界点付近では分散項が大きいので等間隔ソリトン列となり,これがバンチングをあらわす. 4.カイネティクスが対称でも外場によってステップ列に直交した流れがあるときには同じように不安定化が起きるが,これも同様にBenney方程式で記述できる. 5.ステップに垂直な外場による流れがあるときには,孤立したステップがステップにそった揺らぎに対して不安定化を起こす.不安定化したステップの時間発展ははカオス解を持つ蔵本-Sivashinsky方程式で記述される. 6.直線状のステップが成長していく際の揺らぎの変化をモンテカルロ・シミュレーションによって調べると,揺らぎ幅の成長はいくつかの段階に分けられる.キンクが十分に生成された後では,入射原子頻度によって,Edwards-Willkinson型の線形成長とKardar-Parisi-Zhang型の非線形成長の両者が現れる.
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