研究概要 |
磁性の永年の課題である3d遷移金属の強磁性の起源を明らかにすることを目的としている。この問題は、多体問題としては難問であり、一方、一体のバンド計算でよく説明されてしまうことから、その原因を具体的に問う事なく、放置されてきた。我々は次の点が強磁性の起源として不可欠と考えている。 (1)d軌道の縮退とdホール間のフント結合 (2)エネルギー状態密度の形 (1)は最近の実験で明らかにされたように、s,p電子による遮蔽効果のため、dホール間のクーロン反発エネルギーはバンド幅程度となり、2ホールが同一原子上に存在する確率が高くなる。電子のスピン間の結合であるフント結合は、遮蔽されずクーロン反発力と同程度になることから重要である。dホールが0.6個のNiにおいて、この効果を取り入れGutzwiller近似を用いて、その強磁性を説明することに成功した。 今年度はNiのように全部スピンの向きがそろった完全強磁性でない、FeやCoについてその不完全強磁性の条件も調べている。この条件として(2)の因子が重要になる。現実のFeやCoのエネルギー状態密度の形である2つのピークを持つ構造が不完全強磁性を安定化させる上で不可欠であることがわかった。岡部君の論文として発表した。 順調に進行しているがよりいっそう、具体化、定量化を進めたい。Mnのペロブスカイトの強磁性に関しても、その磁化と磁気抵抗の温度依存生を説明した論文を発表した。
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