平成7年度 Niの完全強磁性においてd軌道の縮退とフント結合が重要であることをGutzwiller近似を用いて示した。 平成8年度 Fe、Coのような不完全強磁性を安定化させる上で、2つのピークを持つ状態密度とフント結合が重要であることを示した。スピン波やストナー励起を調べ強磁性の安定性を調べ、フント結合で説明できることがわかった。 平成9年度 重い電子系や高温超電導体の磁性とMott転移を説明した。 以上の研究を通じて次の成果が得られた。 Fe、Co、Niなどの遷移金属強磁性の起源についてはd軌道の縮退を考慮する必要性を指摘してきた。それに基づいてdスピン間のフント結合が重要な役割を果たしていることが明らかにされた。特に、スピン波理論やストナー励起の安定性も検討し、バンド構造と軌道縮退の効果で現実のFe、Co、Niの強磁性とその差異(完全、不完全強磁性)が説明された。軌道縮退の重要性とその働きを具体的に示したことは重要な成果であり、現実の遷移金属強磁性の起源が明らかにされた。 さらに磁性の研究として近藤効果におけるフント結合の役割が明らかにされ、近藤温度がフント結合によっていかに変化するかが示された。重い電子系の磁化率や輸送係数、高温超電導の磁気的メカニズムの解明など磁性に関連する現象を幅広く研究し、夫々における磁性の役割を明らかにした。
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