GICやセラミクスなどの非一様な内部構造をもつ複合系は、しばしばクラスター内からクラスター間へ向うような階層的な秩序化過程を示す。このような場合の臨界現象は、非線型磁化率X_2によってよく調べられることがこれまでの実験から分かってきた。本研究では、非線型磁化率の精密観測手法をさらに発展させて、塩化金属GIC系の逐次相転移機構をより詳しく探り、セラミック超伝導体YBa_2Cu_4O_8が示す協力現象としてのグレイン間秩序化の臨界現象を見出すことを試みる一方、新しいタイプの複合系として、近年注目されているC_<60>の結晶をホストにした磁性化合物を試作して測定対象に加え、共通の秩序化の特徴を探索した。 初めに研究方法の基盤となるX_2の抽出法を再検討した。臨界点近傍で高次高周波の寄与を考慮する必要性が判明し、応答のフーリエスペクトルを確認しながら有意な高次項までの級数でX_2を求める方法を開拓した。 CoCl_2-GICに関する測定の結果、3次高周波でX_2を近似できるのは磁場振幅が約1.00e以下の場合に限られ、以上の領域については上記解析方法が有効に適用できることが分かった。決定されたX_2の温度変化から、弱磁場におけるX_2の符号反転は非線型応答の帰属が変わることによる本質的な現象であることが分かった。焼結体YBa_2Cu_4O_8の測定からは、グレイン間転移点近傍のX_2は、磁場振幅が数十mOe以下でなければ抽出できないことが分かった。零磁場への外挿を推察することで、臨界現象としてのX_2の形は負の鋭いピークと思われ、グレイン間位相秩序がフラストレーションを伴うXYモデルの相転移に対応する可能性が示された。 一方、磁性C_<60>系を得るためにIBrド-ピングを試みたが、磁化の確認された試料は得られていない。これに関しては、次年度さらに試行を重ねるものとする。
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