研究概要 |
本研究では、メゾスコピックサイズの結晶学的クラスターを含むような、いくつかのタイプの複合系磁性体および超伝導体を取り上げ、それらの内部構造に由来する特徴的な相互作用の効果を、主として線型・非線型磁化率(X_2)の観測により調べた。 初段階には、超低周波・極微弱励起磁場領域での測定が可能な、交流法線型・非線型磁化率測定システムを完成させた。特に非線型応答信号について、線形成分の漏洩や暗信号が生じ難いような新型のクライオスタットが考案された。この測定システムによって、CoCl_2-GICの相転移点近傍の磁化の第3〜第9高調波成分までの温度変化の様子が明らかにされた。磁場振幅0.6Oe以上で観測した場合、高温側の臨界点近傍で、全ての高調波成分が正方向のピークを示し、この条件下でのX_2の異常が対称発散型であることが確認される。振幅が0.3Oe以下になると、第3高調波は、転移点で符号を変えるような異常形へ変化するが、これが本質的なX_2の変化であることも証明された。一方、超伝導体YBa_2Cu_4O_8セラミクスに関して、結晶試料の超伝導転移点より十分低温側で、X_2の発散的ピークが見出され、これがd-波型超伝導セラミクス固有の、フラストレーションを伴うグレイン間位相秩序化を反映する可能性が示唆された。さらに、新規試料系であるCaO-SiO_2-0.5Fe_2O_3ガラス系については、静磁化率とESRの観測を併用した研究が行われ、強磁性析出クラスターの周囲に,クラスターとは緩和特性の異なる境界領域が存在し、この部分がクラスターと相互作用することで、クラスター磁化に強磁性的内部場を与えていることが示された。一方、合成を試みたIBrドープC_<60>系に関しては、IBr分圧の条件によらず、液体He温度までの範囲で有意な自発磁化が認められなかった。
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