ストカスティック共鳴とはコヒーレントな信号と雑音の協力効果によって出力の信号対雑音比が共鳴的に増大する現象である。雑音印可による信号対雑音比の増大という奇妙な性質にもかかわらず、様々な系において起こりうることが知られている。入力雑音強度を制御することによって出力の信号対雑音比が制御できるという点から、ストカスティック共鳴は信号処理、とくに光信号処理への応用が期待できる。この点から光学的な系を用いたストカスティック共鳴の研究は重要であり、本研究はこの基礎をなすものである。また、この共鳴の性質は雑音の相関時間に大きく依存するので、この依存性を研究する必要がある。 本研究では、光学的双安定系を用いたストカスティック共鳴の実験を行った。実験に用いた光学的双安定系は電気光学素子と偏光子により構成され、電気的に帰還を行うもので、容易に安定な動作が可能、動作光波長範囲が広い、低光パワーでも動作可能などの特長を持つ。実験から、雑音相関時間が小さいほど信号対雑音比のピーク値が大きく、共鳴の幅が狭く、ピークを与える雑音強度が小さいという結果が得られた。 また、適用範囲の広い、単純な双安定モデルを用いて計算機シミュレーションを行った。計算機シミュレーションは、4次関数の双安定ポテンシャル項を持つ、過減衰系のLangevin方程式について行った。計算結果は、実験結果を良く再現した。用いた方程式は、本実験に用いた光双安定系に固有のものではなく、双安定系一般を表現できるものであるため、本研究の結果は他の双安定におけるストカスティック共鳴にも適用することができる。
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