本研究では不規則電子系の電子輸送特性を決めているアンダーソン局在を、主として準位統計の観点から調べ、有限サイズスケーリング解析の結果等と比較検討を行い、局在現象の本質に関わる幾つかの知見を得た。 1.ユニタリークラスの典型例である、強磁場下の二次元不規則電子系、すなわち量子ホール系の局在-非局在転移を、準位統計のスケーリング則の観点から調べ、局在長の発散の指数が、有限サイズスケーリング解析の結果と非常に近い値で得られることを示した。不規則ポテンシャルの相関距離を変えた場合の解析では、非ユニバーサルな振る舞いも見られ、臨界領域の幅が狭い場合の対処は今後の課題として残された。 2.時間反転対称性とスピン回転対称性の両方を満たすオーソゴナル系の研究は、世界中で盛んに行われており、データーもほぼ出尽くした感があるので、本研究では、スピン回転対称性だけが破れているシンプレクティック系についての解析を進めた。 (1)波束の拡散の計算から、転移点直上での波動関数やエネルギースペクトルに、フラクタルな構造が存在することを確かめた。この場合、波動関数の広がりのフラクタル次元は三次元の場合約1.5程度であり、この次元は、他のクラスの場合にもほぼ等しいことをがわかった。 (2)転移点直上での準位統計は、オーソゴナルな場合とは明らかな違いがあることを示した。 3.ランダム磁場中の局在問題も有限サイズスケーリングや準位統計、拡散のシミュレーション、伝導度揺らぎ等によって二、三次元の場合に解析し、詳細な知見を得た。 4.磁場中の三次元不規則電子系のアンダーソン転移については、量子ホール系を何層も重ねたモデルと、強束縛電子モデルにパイエルス因子を導入したもので有限サイズスケーリングの解析を行い、どちらの場合も局在長の指数が1.35程度になることを確かめた。
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