(1)ヘリウム原子のよる陽電子散乱を超球座標法に基づく大規模緊密結合法によって考察した。低エネルギー散乱では陽電子と電子とが結合状態を作るポジトロニウム形成のチャンネルが支配的になるが、従来の原子基底による展開ではこのチャンネルを充分に取り込むことは難しかった。本研究では、正確な電離エネルギーを与えるモデルポテンシャルを用いることにより準一電子系としてヘリウムを扱い、完全に対等な粒子間の三体問題として定式化を行った。解離極限においてヘリウムのn=1-4、ポジトロニウムのn=1-5に移行するすべての断熱状態を基底に含ませて充分な収束性を保証した。得られたポジトロニウム生成断面積は実験値とよい一致を示し、現存する理論計算の内、最良のものであることが確認された。 (2)ガウス基底展開による変分計算により、反陽子ヘリウムの準安定状態の解析を行った。反陽子がヘリウム原子に入射すると、電子を一つたたきだし、代わりに自分は主量子数が38あたりの高い励起状態に捕獲される。高い状態は変分計算が難しいが、特にこの状態は自動電離状態に属するため、理論的な扱いがやっかいである。本研究では角運動量の分解に新手法を開発し、定量的に満足のいくエネルギー固有値を得た。 (3)ミュー粒子が触媒として反応を促進するミューオン触媒核融合の初期過程として重要なミューオンの捕獲過程を断熱および透熱基底の記述による半古典手法により考察した。ガスを構成する原子の電離を伴うミュー粒子の捕獲は主量子数が14あたりにピークを持つという予想を理論的に裏付けた。
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