1.レベル・セット定式化を用いて、幾何学的模型を議論した。空間次元が任意であっても、曲線短縮(伸長)方程式が簡潔に与えられることが分かった。また、曲線伸長方程式に対するサフマン・テイラー解を一般化する解が簡単に導出できることを示した。 2.反応拡散系の模型を、一般的な曲がった空間において定式化できることを示した。1つの結果として、有名なカーダー・パリジ・ザン方程式を基礎づけることに成功した。方程式に現われるランダム項は、この場合、空間の不均一性を反映している。 3.3次元空間における離散面(3角分割した面)の運動を記述する理論を提出した。ガウス・ワインガルテン方程式とガウス・コダッチ方程式を離散化した表式を見出した。速度に対する運動学的な条件を課すことにより、"曲率"に対する微分一差分方程式が導かれる。 4.平面における離散曲線(区分的に直線である曲線)の運動を記述する理論を提出した。フレネ・セレ方程式を離散化した公式が得られる。この離散化フレネ・セレ方程式と速度に対する運動学的関係式の両立条件は、幾何学的模型の微分一差分方程式を与える。また、離散化フレネ・セレ方程式とアブロウィッツ・ラディックによる離散的固有値問題との関係が明らかにされた。 5.3次元空間における離散面の運動を、離散面を2次元球面に写像することによって議論した。球面上の離散面の運動は、微分一差分方程式を与える。特に、境界の運動は、可積分系(離散的変形KdVヒエラルキー)になる場合があり、その運動をガウス・ボネ公式と結びつけると、"ガウス曲率"が保存することを発見した。 以上のように、「幾何学的模型とその応用」の研究は非常に順調に行われ、多くの成果が得られている。
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