1)3次元ユークリッド空間内の曲線について、従来の幾何学的模型とは異なる新しい模型を用いて研究した。この新しい模型では、曲線の運動は加速度場によって決定される。曲線の内在的な量(計量、曲率、摂率)がみたすべき時間発展方程式を提出した。また、得られた時間発展方程式の物理的応用として、2次元平面内の弾性ひもの運動を議論した。 2)高分子やDNAの運動を扱う場合、系の離散性を無視することはできない。そこで、離散的な曲線を記述する離散的フレネ・セレ公式を導入した。そして可積分系による最も簡単な例として、連続な場合に曲率に相当する量が離散的mKdV方程式をみたすことを示した。これは、離散的フレネ・セレ公式が離散的AKNS形式に含まれるためである。三角分割された曲面についても離散的mKdVヒエラルキーや離散的非線形シュレディンガー方程式をみたすことを示した。この運動を通して、ガウス・ボンネの定理と可積分方程式の関係を調べた。 3)離散化された曲線の運動と幾何学的位相の関係を調べた。この関係を用いて、ポントリャ-ギン指数の離散化された表現を得た。また、この表現はベリ-位相の表現にもなっていることを示した。この理論を磁性体に応用することにより、非線形シグマ模型にチャーン・サイモン項と新しい項が加わった模型を構成した。 以上のように、離散系における幾何学的模型についての研究が発展できた。
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