研究概要 |
(1)磁場の方向と入射粒子の速度ベクトルが平行な場合に使える磁場存在下での電子捕獲断面積を求める緊密結合方程式を定式化すると共にプログラムの開発を行った。 (2)(B^<4+>+H)系の電子捕獲過程に対し、上記のプログラムを適用したところ次のことがわかった。 (1)ゼーマン分裂によりB^<3+>(1s3p_<-1>)状態は4Σ,5Σ,6Σ状態(始状態から最初にフラックスを受け取る)に近づくがB^<3+>(1s3p_<+1>)状態は遠ざかる。このためB^<3+>(1s3p_<-1>)状態の方がB^<3+>(1s3p_<+1>)状態よりかなり大きな断面積を持つ(磁場10^4TでB^<3+>(1s3p_<-1>)状態の断面積はゼロ磁場の約4倍になるがB^<3+>(1s3p_<+1>)状態は2倍弱にしかならない)。 (2)B^<3+>(1s3d_0)状態は主にR=10〜20auにおけるB^<3+>(1s3d_<±1>)状態からの遷移により生じ、強い磁場領域で大きい断面積を持つようになる。 (3)磁場の影響は衝突エネルギーが小さいほど大きい。 (4)全断面積は磁場と共に単調に増加する。 (3)(He^<2+>+H),(Be^<2+>+H),(Be^<3+>+H)にも(1)のプログラムを適用したところ(B^<4+>+H)系の場合とほぼ同じ結論を得た。またこれらの系でR=∞でエネルギー的に近い(Be^<2+>+H(2l))状態間の励起断面積を求めたところ1/100の磁場の強さで基底状態からの電子捕獲過程と同程度の磁場効果があった。 (4)磁場による結合項は断熱近似の破れの項と異なる対称性を持っている。つまり分極した光を観測するなど対称性をうまく利用した測定をすれば、磁場の働かない時は遷移しない状態が観測できるようになる。どのような実験をやればよいか実験家に提案するため、いくつかの系を選んで計算を実行中である。
|