1.衝突方向と角度が任意である外部磁場存在下で電子捕獲断面積を計算することは膨大な計算量を必要とする。そこで最初にプログラムの改良を行い、高速化を実現した。このプログラムを用い、(B^<4+>+H)系に対して磁場の強さが10^4テスラまで断面系を計算した。その結果 (1)磁場方向が衝突平面と垂直である場合に磁場の影響が最も大きくなる。これは磁場が回転結合と相乗的に働くためである。また磁場の強さによっては磁場の項と回転結合が互いに打ち消し合うため、断面積が減少する場合もある。 (2)磁場方向と衝突方向の角度に関し積分した全断面積は磁場の強さと共にゆるやかに増加する。またこの影響は低エネルギー程大きい。 などがわかった。 内殻電子の影響を調べるため、現在(B^<4+>+H)系と電荷が同じ(N^<4+>+H)系に対して同様の計算を実行中である。 2.イオンの運動によって生じる標的の分極と磁場との相互作用が電子捕獲過程にどのように影響を与えるか調べるため、この相互作用を含んだ緊密方程式の定式化を行い、プログラムを作成した。更にプログラムを用いて断面積のモデル計算を行ったところ、その影響は特殊な場合を除きかなり小さいことがわかったので当面この項は無視することにした。 3.He^<2+>イオンをH原始に衝突させたときに起こるHe^+(2l)+H^+状態への遷移は共鳴的過程のため磁場の影響がカオス的になる可能性がある。この系の電子捕獲断面積を計算したところ衝突対が非常に離れた所でシュタルクミクシングによる遷移が起こることがわかった。この遷移だけなら状態間の乗り移りが起こらないとして通常のg-u遷移の扱いをすればよいのだが、この系ではそれと同時に回転結合による遷移が起こっており、衝突計算をしなければならない。この項を取り入れたプログラムを作成し、現在実計算を行っている。
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